• 2025年4月21日

若者に多いスポーツ障害の症状と治療法

スポーツは健康維持や競技力向上のために重要ですが、特に成長期の若者は身体が発達途中であり、スポーツ障害のリスクが高まります。今回は、スポーツ障害の症状や治療法、予防策についてご説明いたします。


若者に多いスポーツ障害の症状とは

スポーツ障害とは、特定の動作を繰り返すことで筋肉や骨、関節に過度な負担がかかり、痛みや機能障害が生じる慢性的な疾患のことを指します。一般的なスポーツ外傷(骨折や捻挫などの急性の怪我)とは異なり、繰り返しの負荷が原因で徐々に発症するのが特徴です。

スポーツ選手に見られる主な症状

  • 関節の痛み(膝・肩・足首など)
  • 腱の炎症(腱炎)
  • 骨の微細な損傷(疲労骨折)
  • 筋肉の痛みや硬直
  • 運動時の違和感や可動域制限

特に、膝や肩の関節はスポーツによる負担が大きく、障害が発生しやすい部位です。スポーツ障害は、痛みや違和感のサインを無視すると悪化し、治療期間が長引きます。早期に専門医に相談することで、競技復帰の時間を短縮できる可能性があります。


スポーツ障害治療の流れ

  1. 初診・問診:運動習慣や症状の経過を詳しく確認。
  2. 画像診断(X線、MRI、CTスキャン)による詳細な評価。
  3. 保存療法の検討:リハビリや物理療法による治療が可能か判断。
  4. 手術の判断:重度の損傷がある場合、関節鏡手術や靭帯再建術を検討。
  5. リハビリ・競技復帰プログラム:専門家の指導のもと、回復を促進。

専門医による適切な診断の利点は多岐にわたり、一般的な整形外科では見逃されることがあるスポーツ特有の障害を、専門医は正確に診断することができます。さらに、競技復帰を見据えた治療計画が立てられ、スポーツ選手向けに特化したリハビリが可能です。専門医の指導により、怪我の再発リスクが低減されるため、再発防止にもつながります。


主なスポーツ障害の種類と治療法

膝関節の障害と治療法

  • 前十字靭帯(ACL)損傷:急な方向転換やジャンプの着地で膝を捻ってしまうことで生じます。ACLが断裂すると膝がガクッとずれる状態となり、日常生活においても膝不安定性が生じるため手術が必要なケースが多く、復帰には6か月以上を要します。
  • 半月板損傷:膝を捻ることで膝関節のクッションとして機能している半月板を損傷することがあります。上記の前十字靭帯損傷時に合併して生じることも多くあります。若者の半月板損傷は可能な限り半月板縫合術を第一に考えます。しかし縫合できない場合には半月板部分切除を行います。
  • 内側側副靭帯損傷:膝が外側に反り返るような受傷では内側側副靭帯断裂(損傷)が生じます。多くの場合はブレースによる固定で治ります。しかし重度の損傷の場合には再建術が必要となり復帰には6か月かかります。

肩関節の障害とリハビリテーション

  • 野球肩(腱板損傷・インピンジメント症候群):投球動作の繰り返しによる炎症であり、休養とリハビリが基本です。リハビリにおいては疼痛によって強張っている肩甲骨周囲の筋のリラクセーション、股関節周囲のストレッチ、などを行います。ノースローの間に筋緊張を改善させ、シャドウピッチングなどを行いながら段階的に投球復帰を図ります。
  • 脱臼・反復性肩関節脱臼:コンタクトスポーツで多発します。リハビリで筋力強化を行い、必要なら手術を検討します。若者の肩関節脱臼は再発率が9割以上あり、コンタクトスポーツの場合には、積極的に関節鏡視下に損傷した関節唇を縫合する手術を行います。

手術が必要なケースと非手術治療

保存療法(非手術)としては、まずRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が行われ、その上で消炎鎮痛薬(NSAIDs)の使用や、理学療法士によるリハビリが施されます。一方、必要な場合には手術療法が検討され、関節鏡手術による靱帯再建術や半月板縫合術が実施されます。また、理学療法士によるリハビリテーションでは、可動域訓練によって関節の動きが改善され、筋力強化を通じて患部周囲の筋肉が鍛えられ、さらに競技復帰プログラムによって段階的に運動負荷が高められます。スポーツへの復帰が目標ですが、再発予防を行っていくことが重要です。


スポーツ障害の予防と早期対応

トレーニング中の注意点

  • 急激な運動負荷の増加を避ける
  • 正しいフォームを維持する
  • 睡眠・栄養管理を徹底する

適切なウォーミングアップとクールダウン

  • ウォーミングアップ(動的ストレッチ、軽いジョギング)
  • クールダウン(静的ストレッチ、アイシング)

疲労骨折を防ぐためのアプローチ

  • 適切な休息を取る(週に1日は完全休養日を設ける)
  • 栄養管理(カルシウム・ビタミンDを摂取)

スポーツ選手のための調査とデータ

若者に多いスポーツ障害の統計によると、膝の障害が30%で最も多く、次いで肩が25%、足首が20%となっています。さらに、ラグビー、サッカー、バスケットボールといったコンタクトスポーツや、野球、テニス、陸上競技のように繰り返し動作が多い競技においてもスポーツ障害が頻繁に見られます。アスリートのパフォーマンスに関しては、怪我が長引くと競技力が低下し、怪我をかばうことで他の部位に負担がかかる傾向があり、この点で注意が必要です。例えば、肩をかばえば同側の肘に、膝をかばえば同側の足首やふくらはぎ、また反対側の膝に違和感や痛みが生じます。


若者に多いスポーツ障害は早期に診断して適切な治療を行うことで競技への復帰が早まります。保存療法と手術療法があり、どちらの治療法を選択してもリハビリが非常に重要な役割を果たします。また、トレーニングやウォーミングアップを適切に行えばケガの予防が可能です。データによると、膝と肩の障害が特に多く、コンタクトスポーツでは発生リスクが高いことが示されています。さらに、専門医によるアフターケアを受けることで再発防止とパフォーマンスの向上が期待できるため、スポーツ障害を予防し最高のパフォーマンスを発揮できるよう、常に適切なケアを心掛けましょう。

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